2017年4月28日夜21時頃、歩道の上に落ちている財布を発見しました。
人通りのそれなりに多い場所だったのにも関わらず拾われずに落ちていたことから、財布が落とされてからまだそれほど時間が経っていないと思われました。
滅多に落ちているモノでは無いので、財布を拾う時にも少し周りをキョロキョロとしてしまいました。近くに黒塗りの怪しい車も停まっていたので、財布を拾った瞬間に恐いおじさんが出てきたりするんじゃないかと思ったのです。
拾い上げた財布は、質の良い革製の二つ折り財布でした。
財布の折り目からはカードのようなものが何枚も見えたのを確認して「あぁ、財布だ」と確信したのでした。
拾った財布を持って早足で現場を立ち去る
人生の中で人は何度財布を拾うのでしょう。
僕の場合は最後に財布を拾ったのがいつだったのか思い出せないほど長い間、財布を拾っていなかったために、拾った財布を手にした時は少しドキドキしてしまいました。
財布を拾った後、周りをキョロキョロと確認し、早足でその場を立ち去りました。
もしも持ち主が戻って来て、僕が財布を持っているのを見たら誤解されるに違いないと思ったからです。あるいは、警察官から職務質問を受けて、他人の財布を持っていることが見つかったら、きっともっと面倒なことになる。
そんな思いから、なるべく早くその場所を立ち去りたかったのです。
「面倒なモノを拾ったなぁ、拾うんじゃなかったなぁ」などと思いながら早足で歩き続けました。
「ネコババしてしまえ」という悪魔のささやき
財布を拾った現場から数百メートル離れた場所まで歩いたところで、後から追いかけて来る不審者も居ないことを確かめると、僕の頭の中で悪魔がささやき始めます。
「誰も見てないんだしネコババしてしまえ」
「現金だけ抜い交番へ届ければいいじゃないか」
「現金は落とすと戻って来ないって言うぜ」
「日頃頑張っているご褒美だぜ」
そんなささやきに心が揺れそうになった僕も居ましたが、僕は財布の中身を確認することもなく、ただひたすらある場所を目指して歩き続けました。
財布を拾った現場から徒歩5分ほど離れた場所にある交番です。
お金を拾ったら交番に届ける。
当たり前のことですが、世の中にそれが出来る人は少数なのかもしれません。
恐らく僕が財布を拾ったのを見た人は居ないでしょうし、カード等を悪用しない限りは、たとえ落とし主が被害届を出したとしても、警察がまともに捜査をしないのは僕にも分っているので、現金さえ抜き去ってしまえば丸儲けです。
しかし、僕はそれをしませんでした。
何故なら、そんなお金で子供達にご飯を食べさせてはいけないと思っているからです。お父さんが盗人のようなことをして得たお金で買ったご飯を子供達が食べるなんてことは、僕には考えられないのです。
そのお金で子供達をどこかに遊びに連れて行ったとしても同じです。自分の為に滅多に飲めないプレミアムモルツを買ってみたとしても、きっとマズい酒になるでしょう。
そんな気分になるくらいなら、交番に届けて良い事をしたという満足感をツマミにして発泡酒を飲んだ方がよっぽど上手い酒が飲めるはずです。
だから僕は拾った財布を一度も開くこともせず、そのまま交番に持込んだのでした。
ちなみにネコババというのは、猫がウンチをした後に砂で隠してしまう行為から出来た言葉のようです。つまり拾ったものを隠してしまうということの隠語ですね。最近ではネコババという言葉よりもポッケナイナイという言葉の方をよく聞くかもしれません。
拾った財布を交番に届ける
財布等を拾って交番や警察署に届ければ遺失物として処理をしてくれます。届けなければ横領罪が成立してしまいます。なので財布を拾ったら必ず交番や警察に届けましょう。
交番の前に立っていた警察官に「財布を拾ったんですけど」と伝えると事務処理を開始してくれました。
警察官に財布を渡すと、中身を確認する為に現金を目の前で取り出して数え始めました。財布の中には45,000円ほど入っていました。
どこで拾ったのかなど基本的なことを確認した後は「権利はどうしますか?」ということになります。
拾った財布と権利
財布等を拾うと、拾った人にはいくつかの権利が発生するため、事後の対処をするためにこの権利関係をどう処理するかが重要になるのです。
財布等の拾得物を警察に届けた場合、落とし主が3ヶ月間現われなければ財布本体や中身、現金などを拾い主が受け取る権利が発生します。落とし主が見つかればそのまま落とし主に引き渡されます。
現金の場合は落とし主が見つかっても拾った人は5〜20%の現金(報労金)を請求する権利が発生するそうです。
また、拾った財布を交番まで届ける交通費などが必要だった場合は、それらを請求する権利も得られます。
● 報労金を請求する権利
● 落とし物の提出などに要した費用を請求する権利
● 所有権を取得する権利
今回の場合は、財布の中身に身分証も含まれていたようなので、落とし主が出てくる可能性が非常に高いことが予想されました。なので持ち主不在で僕の物になる可能性はかなり低かったことや、権利を主張すると書類にいろいろと書くのも面倒だったため、全ての権利を放棄する欄にサインをすることにしました。
持ち主が現れても報奨金は受け取る権利があるので45,000円だと約2,000円〜9000円くらいは受け取ることが出来たのですが、報労金を受け取ろうと思うと持ち主に連絡先を伝える必要があるらしく、なんだか面倒の元になりそうだったのと「クレクレ」というのも善意が台無しになる気がしたのでその権利も放棄することにしたのでした。
そんなわけで、全ての権利を放棄すると拾得物受理の手続きは一気に簡単になり、警察に連絡先を教えて拾得物の書類の中にある「放棄します」という欄にチェックを入れてサインするだけで警察から解放されます。
連絡先を教える必要があるのは落とし主が拾い主に連絡をして欲しいとお願いした場合、警察から拾い主に連絡をする必要があるからのようです。
財布を拾ったら交番へ行こうのまとめ
現金45,000円が財布から出て来た時は、一瞬心が揺れそうになりましたが、落とした人のことを考えれば落とした時のまんま戻ってくることが何よりも嬉しいはずです。
その人にも家族が居て、子供にニンテンドースイッチでも買ってあげるためのお金だったかもしれませんから、大人がその笑顔を奪う権利はありません。拾って真っすぐ交番に届けるのは当たり前のことだと思います。
財布を落として落胆している持ち主が、落とした時のそっくりそのまんまの財布を受け取ったときの驚きと安堵の表情を想像するだけで、上手い酒が飲めるというものです。
そんなことを考えれば、財布に子供と一緒の写真を入れておいたりすれば、万が一自分が財布を落としたとしても現金がそのまま戻って来る可能性も高くなるのかな、なんて思いました。
しかし、一点気になることが。
財布を持込んだ際に交番には警察が一人しかいませんでした。
大した書類も作成していませんし、書類の写しを貰ったわけでもないので、担当の警察が中身をネコババしても全く分かりません。「現金はなくなってました」なんて真面目な顔をして持ち主に返せば終了です。
調べてみると結構出て来ますね。警察のネコババ事件。。。。
権利を主張すれば拾得物受理の書類を貰えるようですが、僕は権利を放棄したので書類を貰えませんでした。
うーん、警察も不祥事が多いですし信用せずにしっかりと書類を要求すべきだったのかなと、交番を出てから思ったのでした。
「良い警察官だったら良いなぁ」と警察を疑わなければいけないのも変な話ですが、良い警察官だったら良いなと思います。
ちなみに掲載している写真は全てイメージです。拾った財布ではありません。